こんにちは真宗興正派の片岡妙晶です。
「○○第一」という言葉をご存じでしょうか?
これはお釈迦さまの弟子の特徴をあらわした言葉なんです。
説法に秀でた弟子は「説法第一」。
真理を見る目を得た者は「天眼第一」など、それぞれの得意とすることをもって「○○第一」と呼んでいました。
しかし、これは特別優秀な弟子だけが持っていた呼び名ではないんです。
仏弟子はどんな能力であってもみな平等に「○○第一」を持っていたのです。
愚路と呼ばれた愚か者、周利槃特
お釈迦さまの弟子の中に一番頭が悪かったとされる
どのくらい頭が悪いのかというと、自分の名前すら忘れてしまうほどだったそう。
そんな自分自身の頭の悪さにいよいよ堪え切れなくなった周利槃特は、ある日お釈迦様に仏弟子を辞めたいと願い出ました。
と。
するとお釈迦様は、こう言いました。
お前の一番好きなことは何か?
少し驚いた周利槃特であったが、
私は掃除が好きです!
と答えた。
それを聞いたお釈迦様は、
では『塵を払い、垢を除かん』と称えながら掃除をするとよい。
と教えました。
それから周利槃特は、くる日もくる日も言われた通りに掃除をしたそうです。
やはり偈を理解することはできませんでしたし、教えてもらった言葉を忘れそうになることもありました。
けれど、それでも毎日箒を持って
塵を払い。垢を除かん
ととなえ続け、ただ黙々とひたむきに掃除を続けたのです。
やがて、周利槃特は掃除によって悟りを開くことができました。
そうしていつからか「掃除第一」と呼ばれるようになり、彼を馬鹿にするものはいなくなったのです。
人気アニメのけものフレンズ風にいうと「君は掃除が得意なフレンズなんだね!」という感じでしょうか。
誰でも〇〇第一に
近頃「自分に自信が無い」なんて言葉をよく耳にします。
それはSNSの影響か、他者の優れた面ばかりが目について、己は誰よりも劣っているように感じてしまうのだそうです。
お釈迦様の弟子の中には、先に紹介した周利槃特を含み何もできない者はいませんでした。
『○○第一』というシステムによって、「偈を理解できない弟子」であった周利槃特を『掃除が得意な弟子』に変えたように、皆『○○が得意な弟子』にしてしまったのです。
人の〇〇第一を見つけよう
人のできないところや落ち度ばかりを見ていると人を傷つける言葉が口からでます。
SNSでは目に余るひどい言葉が飛び交っていますね。
私たちはあくまでも凡夫ですので、どんなに気を付けていても意図せず相手を傷つけてしまうことがあります。
そんなときは「お釈迦さまならどんな第一をつけるだろう?」と仏さまの眼をお借りしましょう。
世間の醜い部分や汚い事柄ばかりが眼について、すべてが嫌に思えてしまったとしても、それは誰かの「○○第一」に気付いていないだけだということを忘れずに。
お念仏に出遇った方には、もうその眼が届いておりますから。
仏さまの眼は、必ず「○○第一」を見つけます。
その眼が己の中にも在ることを胸に刻み、安心の内に日々を生かせていただきましょう。
この記事を書いた人
香川県在住の真宗興正派僧侶。
若者視点から見た、専門用語によらないシンプルでわかりやすい語り口が特徴です。
異業種との交流も広く、多視点から見た現代社会に活きる仏法を得意としています。
一つの偈(教えの言葉)も理解できない、そんな愚かな私はもうここに居られません。