こんにちは、曹洞宗の大鐵です。
永平寺は修行の厳しさもさることながら、その自然環境の厳しさもなかなか耐え難いレベルです。
この記事だけ読むととても厳しくツラい場所のような気もしてきますが、その厳しさをを補ってあまりある美しさがあることも事実です。
本記事では永平寺で過ごした元修行僧として、永平寺をとりまく自然の美しさを紹介します。
ブッポウソウ
夜坐(夜に行う座禅)をしていると、どこからともなく「ブッポウソウ(仏法僧)」と聞こえます。
仏教では「仏法僧」を大事にすることから、その鳴き声が大変ありがたい霊鳥だとされていました。
見た目にもカラフルな鳥ですね。
この鳥がブッポウソウと鳴いていると考えられていましたが、昭和初期になって驚愕の事実が発覚します。
実はブッポウソウと鳴いているのは別の鳥であることが判明しました。
実際にブッポウソウと鳴いていたのはフクロウの仲間であるコノハズクの鳴き声だったそうです。
人間の勘違いですから鳥は何も悪くないのですが、なんとなく残念な感じがしますね。
仏法草
鳥のブッポウソウと同じ読みの植物もあります。
永平寺の庭には金比羅堂という建物があり、その周辺には憩いの場が設けられています。
そこには仏法草と呼ばれる植物が生えています。
春になると仏様の座像のような花を咲かせます。
すごく不思議な形の花ですね。
正式名は座禅草というらしいです。
トトロの木
永平寺の七堂伽藍の階段を登り、西側の奥に行くと開山堂である承陽殿という建物があります。
その脇の侍真寮のバルコニーから見える山のてっぺんにとても特徴的な大木が生えているのです。
その大木が瓢箪型で、ジブリのトトロの形に似ていることからトトロの木と3年目以上の修行僧の間では呼ばれていました。
カップルで行くとインスタ映え間違い無しなのですが、3年目以上の修行僧しか入ることができないので一般参詣者は見ることができません。
永平寺周辺は山菜が豊富
春になると永平寺の周辺では山菜がたくさんとれます。
それを大庫院(典座寮)に持って行くと、四九日に山菜の天ぷらうどんになって薬石(夕食)に出していただけました。
タラの芽、こごみ、ウド、ふきのとう、葉山葵、コシアブラなど。
その他には桑イチゴ、グミ、自然薯、ゼンマイ、ワラビ、山椒、ユキノシタ、ヨモギなど。
店に行けば1,000円くらいで売っている山の幸がたくさん採れました。
永平寺の山の恵に感謝感激ですね。
愛宕山の松
永平寺の庭にある愛宕山の頂上には代々首座和尚さん(修行僧のリーダー的存在約3ヶ月務める)が根松を植えており、頂上は松でいっぱいになっております。
その松が綺麗なもので、苦労して登った達成感を感じることができました。
むかしは一般の参拝者も登れましたが、道が老朽化して今は登れません。
毎年9月には愛宕山諷経という外で読経をする法要を行いますが、お袈裟をつけて下駄で険しい山道を登るからとても危なかったです。
お勤めを終えた後、山をおりる時はさらに危険が増します。
7年間毎年登り、1回だけ転んで衣を汚してしまいました。
永平寺の苔の景色
永平寺は雪が降るので、雪に守られるからか苔がたくさん生い茂っています。
天然のわび・さびが味わえます。
それぞれの苔の名前は知りませんが、たくさんの種類の苔が生えてます。
特に、永平寺の庭にある福井藩松平家の墓地、松平御廟所の苔が見事なのです。
とはいえ、残念ながらその場所も一般参拝者は入ることができません。
あまり大きな声では言えませんが、七堂伽藍の大庫院3階にある菩提座の間からなら遠巻きに見ることができます。
永平寺の参拝される際にはご覧いただけたらと思います。
もっといろいろな場所を見たいと思うなら、永平寺のお授戒の戒弟(戒名を授ける儀式。約7日永平寺にて寝泊りして修行します)に成れば立ち入れる範囲が広がります。
しっかりと永平寺の教えに触れたかったらぜひお授戒もご検討ください。
修行中、ふっと窓の外を観ると広大な自然と静けさが尊く、不気味で、電気では表現出来ない淡い光が草木の緑色の濃さを変化させます。
今思うと永平寺で過ごした時間の中でも、他ではできない良い体験のひとつだったと思います。
テレビでは味わえない時間の経過を身体全体で感じられ、それが煩悩を騒がせないのかもしれません。
皆さんも月に一回、半日でいいのでブレーカーを落として地球の音や自転を身体全体に感じてみませんか?
この記事を書いた人
三重県在住の曹洞宗僧侶。
失敗のとらえ方についてよくお話します。
永平寺の修行時代のエピソードを中心にコラムを書いています。