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黙食と三黙【折橋大貴師】

こんにちは、曹洞宗の折橋大貴です。

先日福岡市のカレー店がツイッターで発信したこの『黙食』というワードはテレビでも取り上げられ、大きな反響を呼びました。

われわれ和尚さんの世界、とりわけ禅宗系寺院の皆様は「お!」っとなったのではないのでしょうか。

私のお寺は曹洞宗になります。

いわゆる禅宗と呼ばれる宗派のお寺ですが、決まりごとが多い事でも知られております。

全国各地に修行道場があり、長い歴史の中でそれぞれの文化や風習と混ざり合い、各道場独自の作法や法要が生まれました。

そんな中どの道場にも共通する『三黙道場』という『基本ルール』が存在します。

三黙道場とは

三黙道場は今話題の『黙食』にとてもよく似ているのです。

三黙とはその字の通り、喋ってはいけない3つの場所を指したものです。

三黙すべき3つの場所
  • 風呂
  • トイレ
  • 坐禅堂

坐禅堂は僧侶が座禅を行う以外にも、食事や就寝、着替えなど日常生活を行う場所でもあります。

曹洞宗では、同時進行で物事を行うことを良しとしません

入浴時

入浴時も湯に浸かりながら他人と話すなどの行動だけではなく、何かを行う際に他の事を考える事も良くないとされております。

食事の時

例えば食事を例にとってみましょう。

目の前に出された食事、それを食べる直前にニュースの速報が流れると

『あぁ、今日も感染者は○○○人を超えてしまった、いつまでこれは続くのだろう』

途端に胃の奥がキュッと閉まり、暗い気持ちが襲ってきます。

しかしこんなに食事に集中してない状態では、出された食事を作ってくれた人にも、ひいてはその食材を販売した人運んでくれた人生産した人、なにより命そのものに対して失礼である!

禅宗ではそう説いているのです。

五観の偈

曹洞宗には『五観の偈』というお唱え文があります。

修行道場で僧侶が食事を頂く前に毎回読む5つの偈文(お経の事)です。

五観の偈(要約)
  1. この食事が自分の前に並ぶまで、多くの人の手を経てから始めて戴けた事にまず感謝します。(感謝)
  2. 自分は今この食事を戴ける程、日々精進しているかどうか反省します(反省)
  3. 空腹でもイライラせず、好きだから沢山食べたり嫌いだからと残すことはしません(自律)
  4. 食事する事は他の命を頂き自分の命を繋ぐ良薬を貰っているということを忘れません。(食育)
  5. 繋がれた命で全うすべき自分自身の役割、目的は何か、それを考え達成する為この食事を戴きます。(決意と行動)

真剣に取り組んでいる時は人間無駄口など言えません

今あることに徹していると頭の中はよそ見をしなくなります。

五観の偈を唱えた後、坐禅堂で食事をする僧侶達は一言も喋りません

箸が食器に当たる音さえ響く環境に、私自身慣れるのに時間がかかりました。

朝起きてから日常生活全てが修業である

という基本理念を持つ禅宗では、それを徹底させるためにこの三黙道場という決まりが作られたのかもしれません。

黙食で食事そのものに集中してみよう

黙食なんて、急にそんな難しい…とこれを読んでいる皆様は思うかもしれませんが御安心ください。

今回の黙食はあくまで飛沫感染予防のために作られた標語

『感染予防の為』と義務感を持って行動するとそれが苦痛になることがしばしばあります。

抑圧された日常を過ごす現在だからこそ少し息を吐いて、料理が運ばれる前に

『頼んだ料理はどうやって作られているのだろう?』

『コロナが収まったら次は誰と来ようか?』

と一度思いを馳せ、テーブルに料理が並んだら食べる前に

食事そのものに集中してみよう

そんなところから始めてみてはいかがでしょうか。

コラム執筆者

折橋大貴師

神奈川県在住の曹洞宗僧侶。料理人としても活躍。
一緒に作りながら、食べながらのワークショップスタイルのお話を得意とする。

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